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「使い続ける工場」に寄り添う、現場目線の増築プロジェクト
工場建設の相談を受けていると、「まっさらな土地に新しく建てる」よりも、「今ある工場をどう使いやすくするか」というテーマのほうが、実は経営者にとって切実な課題であるケースは多いものです。
今回ご紹介する エス・テック千浜工場の増築工事 は、まさにその“リアルな工場運営の課題”に寄り添ったプロジェクトでした。
外部ライターとして現場を取材する中で感じたのは、単に建物を増やすだけではなく、企業の“今の働き方”と“これからの働き方”をつなぐ役割をしっかり果たしていたという点です。
ここでは、今回の工事を通して見えた「増築という選択肢が持つ価値」を、できるだけやわらかい言葉でまとめてみたいと思います。
風の強い海沿いの工場街で、“未来のスペース”をつくる仕事
今回の工事が行われた掛川市千浜は、海風が強いエリアとして知られ、製造業の工場や倉庫が点在する場所です。
その一角に位置するエス・テック千浜工場は、金属加工を中心とした製作工場。
広い敷地に必要十分な生産スペースを確保されていましたが、事業拡大に伴い「作業効率をさらに上げたい」という要望があり、今回の増築工事がスタートしました。
建設地の敷地は約2,000㎡。その中に、約760㎡の建物を増築するというプロジェクトでした。
増築に必要なのは、“無駄なくつくる”という発想
新築と違い、増築は既存の建物との整合性をとりながら進めていく必要があります。
・既存工場の動線を止めない
・日々の稼働を妨げない
・騒音や粉じんを最小限にする
こうした“現場に寄り添う工夫”が欠かせません。
今回の現場を担当した川島組は、この“稼働しながらの工事”に慣れている会社で、作業中はほこりが舞わないよう散水を徹底するなど、細かな配慮が随所に見られました。
大掛かりな設備を増やす工場ではない分、建物としてはとてもシンプルです。鉄骨造で、柱や梁がしっかりと組まれた“製作向けの器”という印象。
ただその裏には、「必要以上にお金をかけない」「でも長く使えるようにちゃんとつくる」という、工場建設では一番大事なバランス感覚がありました。
“働く人が自然に使える”空間をつくること
今回の増築スペースは、いわゆる生産ラインや高度な設備がメインではなく、“作業がしやすい空間”を素直につくることが目的でした。
とはいえ、工場建築のポイントはいつも「空間の質」です。
・夏の蒸し暑さをどうするか
・冬場の冷え込みは問題ないか
・光の入り方は十分か
・風は抜けるか
・騒音は工場外に漏れないか
その点、今回の建物は“自然の力を活かす”という考え方が取り入れられ、自然吸気による換気が設計に盛り込まれていました。
屋根には断熱材が使われ、夏場の熱気をやわらげる工夫もされています。
工場の内装は極めてシンプル。しかし、シンプルだからこそ、作業者が迷わず使える空間になっています。
4か月という短期間での完成
今回の増築工事の期間は、令和1年9月〜令和2年1月 と非常にタイト。
工場の増築では、・既存動線をどう避けるか・天候の影響・部材納期の調整など、意外と時間の読めないポイントが多い中、予定通りに完成したというのは非常に大きな成果です。
川島組は地元密着の建設会社で、地元の協力会社との連携が強いため、段取り良く進められるのが特徴。今回も約20社以上の協力会社が関わり、各工程が滞りなく進んだことで、無事に引渡しが完了しました。
「増築は、新築以上に会社の未来を決める」
建設業界ではよく“新築より増築のほうが難しい”と言われます。それは、既に回っている生産ラインを止めずに工事を進めたり、働く人の安全や環境に気を配らなければならないから。
今回のエス・テック千浜工場の増築は、まさにその“難しさ”を丁寧にクリアした事例だと感じます。
建築デザインは派手ではありません。IoTも最新設備もありません。しかし、工場の本質である“働くための空間を整える”という点において、とても誠実につくられた建物です。
「増築」という選択肢を考える経営者へ
工場建設の相談をしていると、「今の工場を手放したくない」「移転にはコストがかかりすぎる」「新築より、まず増築でつないでいきたい」という声は本当に多いです。
今回のような増築工事は、そんな企業の“いま”を支える現実的な選択肢。
もし、「敷地の中であと少し広げたい」「増築で生産性を上げたい」というニーズがあるなら、増築事例を知ることは大きなヒントになります。
まとめ:工場の未来を、“少しずつ、確実に”つくる増築工事
今回のエス・テック千浜工場の増築工事は、シンプルですが、とても“企業らしい増築”でした。
・必要なところを、必要な分だけ
・大げさにしない
・でも長く使えるようにする
・社員が自然に動ける空間にする
・生産を止めずに工事を進める
こうした当たり前のことを、きちんと積み重ねて完成した建物です。
派手な最新技術が入っていなくても、企業の成長にしっかり寄り添う建物は作れる。増築とは、会社の未来を“少しずつ前に進める工事”。その良い実例として、今回のプロジェクトをご紹介しました。

